管理社会VSシーフードカレー

いくつもの時代にわたる管理社会とシーフードカレーの戦いを描いたオムニバス映画です。

あれから少し経って


 公演を終えてからの初めての睡眠から目を覚ました時、ああ、戻ってきたな、と実感した。日常とか、現実とか、俗世とかなんとかに。

 

朝に寝て昼過ぎに起きたもんだから、まともに眠れた気がしない。そのくせ夢だけは妙に鮮明で、公演どころかこれまで約半年間で経験した劇団のあれこれも、全部脳の気まぐれによって映し出された安ドラマにさえ思えてくる。変な日本語だけど、思おうと思えば、という程度には。

 

 ところで、そこそこ久しぶりに文章を書く。そこそこ久しぶり(しかも一発目の記事)なのだから鼻息荒くしてキーボードをバチバチ叩くのかと思いきや、存外、指も頭も動かない。自分が思っている以上に言葉は貯金されないものなのだろう。

 

それでも相変わらず突き付けられるのは、おれは一体なにを話すつもりだ、という自問だったりする。言いたかもしれないし言いたくないかもしれない何かが自分の中でだけ迂回して、発せられる言葉は、右折、左折、そしてUターン。まとまるものは何一つない。誰かと喋っていても、いつもこんな調子だ。

 

 まあ、もういいか。ここでこれまで書いたことを全部なかったことにするくらい強引に動線を直す。

 

 公演の少し前に、出演者たちがリレー形式で劇団のブログに告知(?)記事を書こうなんて提案があった。でもなんかよく知らん内に話が雲散霧消して、結局誰も走者になることなく、バトンも繋がらなかった。

 

ただ実のところ、おれは一見関心の無さそうな素振りをしておきながら、ちゃっかり記事を用意し、いつでもバトンを受け取る体勢を整えていた。「え? おれもやんの? ああそう、まあべつにいいけどさ」とか言いつつ誰よりも意気込んでレーンでスタンバっていたわけだ。

 

せっかくなので、その記事(になるはずだったもの)をここで吐き出して供養してやりたいと思う。役に対する認識や解釈が今と若干異なるところもあるが、それはそれで大切なことなのだろう。たぶん。

 

何の考えもなしに『一人称おれ+ですます調』で書いてみたのだが、上手い下手は置いておいて、そちらの方が(おれの中では)明朗に語れているような気がする。実際の発話に近いからか。頭の悪い口語体みたいだけど。

 

 

 

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こんにちは。今回タツオという人の役をする川合です。寒いですね。12月ですね。年末ですね。公演近いですね。楽しみですね。

 

さて、それで、えっと……。

 

……。

 

さて、と一言呟いてみて次の言葉がすんなりと浮かんできたのなら、おれはライターをもう少しくらい長く続けていたのかもしれません。あ、文章書く仕事してたんすよ。一瞬だけ。

 

リズムが悪い、箇条書きっぽい、まわりくどい、読むのに頭を使う……当時社長からもらったダメ出しは大方こんなものだったと記憶しています。

 

それはたぶん、おれの書き方、というかおれの脳ミソの使い方が、仕事においてとことん非合理かつ非効率だったからでしょう。

 

余計な回路を遮断して手早く最適解を導き出せばいいものを、てめえの頭の中の鞄を勝手にごちゃごちゃ掻き回して、ガラクタみたいな言葉を紙の上に散らかすんですね。パニクったドラえもんが、あれでもないこれでもないと、四次元ポケットから大量の道具を撒き散らすみたいに。

 

よって、テキストはこうなります。劇団のブログにここから上の文章はほぼ全部いりませんね。語りが個人的過ぎるし。

 

……。

 

さて、今回登場する(予定の)サトウタツオは、おれにとって良い友人だと思っています。

 

彼はきっと、『それが何なのかはよく分かってないけれど、とにかく自分にとって絶対に必要なもの』を探しているのかもしれない。

 

まあそれって結局何も指していないに等しいんだけど、彼もまた、鞄かポケットをかき回して、あれでもないこれでもないと、自分で人生をややこしくしています。リズムが悪くて、まわりくどい生き方。非合理。非効率。

 

でもおれが彼を好きなのは、彼が安直な最適解にすがらないで、『得体の知れない大切な何か』を全身で引き受けようとしているからなんです。

 

それは、ある種のタフネスと言えます。

 

そんなタツオの魅力をお客さんに最大限に伝えるのは、おれにとってひじょうに難度が高いです。技術的な面でも、もっと根源的な身の沈め方の面でも。

 

なぜなら、今回の出演者の中で、おれだけが役者として完全な白紙だからです。たぶんダントツで下手。

 

視線とか息遣いとか語気とか、舞台に立つ人間なら当然共有されているはずの大大大前提ですら、おれは一々書き込んでいかなければなりません。

 

とはいえもう本番まで残す日も少ないので、おれもトーシロなりに全身を使ってタツオと付き合っていきたいと思います。

 

と、しれっと予防線も張れたので、ここらで結んで次の人にパスしましょう。

 

読んでくれてありがとうございました。

 

みんな、観に来てくれるとうれしいな。

 

 

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追記:

つい先日、日本橋QUEENの映画を観に行った。おれと、友人と、そいつの彼女と、その日初めて会った女の子の4人で。

 

スクリーンのフレディがコールする。おれは自分だけに聞こえる声でレスポンスする。かりそめだったとしても、コミュニケーションが成立した気がする。

 

でも、生身の誰かと会話をするのはとても難しい。特に女の子とは。