終わりと始まりが溶け合う車両
新宿。
ある知人と一緒にカラオケで一晩歌い明かす予定でいたのだが、もろもろの事情があり、キャンセルになってしまった。
夜の雑踏に取り残されたおれは、結局そのままひとりカラオケ店に入った。
でも、特段歌いたかったわけではない。きっと何かを埋め合わせたかったのだろう。
なのでおれは好きな曲を適当に歌ったあと、すぐにソファーで横になって眠った。
とっとと家に帰ればよかったのに。
そんなわけで、会計時の後悔をなるべく忘れようと努めながら、おれは始発電車で帰ることにした。
始発の車両は好きだ。だるそうな奴と死にそうな奴しかいない。始まりの憂鬱と、終わりの空虚さが丁度いいバランスで溶け合う心地よさを感じる。この二つでカクテルでも作ればいいんじゃないか。憂鬱と空虚を、赤い眼で飲み干す6号車。
一日の生き死に。
顎を触ったら、見知らぬにきびが出来ていた。