(包摂的虚無としての)無題
私事だが、数日前に父方の祖母を亡くした。
かといって、この場で祖母の思い出をしみじみと語ろうという気はない。もちろん感情はある。ただ、身内を亡くすと(一種の被害妄想なのだろうが)しばらくの間、周囲から「身内を亡くした人間らしさ」を要請されているかんじがしてなんとなく口を噤みたくなるのである。
というと少しカミュの『異邦人』ぼい話になりそうなのだが、べつにあっけらかんとしていたいのでもない。
ただあえて、ここで祖母について語る言葉があるとするならば、
祖母は詩人であった
と記しておくだけだ。
どれだけ多くとも、これだけである。
この場においては。