派遣社員 島耕作
夢の中では、しばしば「自分が何者であるか」が交錯する。つまり、過去と現在と未来が一本の線であることを止め、あらゆる経験と願望と後悔が、同じ顔をしてやってくる。
たとえば、こんなふうに。
◆◆◆
見知らぬゲームセンターに来たけれど、お目当てのゲームはどれも筐体が埋まっていた。
このまま、誰かが終わるまで待とうか。
いや、でももうじき塾に行かなきゃならない。しかも数学の宿題は全くの手つかずだ。これでは、また怒られる。もう怒られたくない。
待てよ。
今のおれは、もう社会に出て働いていたはずだ。ライターの仕事をしていて、自分の家で文章を書いているんだった。
ああ、安心した。もう塾に行かなくても済むんだ。
でも、ちゃんと休みの連絡は入れないと。無断欠席すると、来週行くのがもっと嫌になる。
とにかく街に出よう。それよりもSに会いに行かなきゃ。
そうだ。おれにはSがいたんだ。やっぱりうまくいってたんだ。
新宿の街を走って、もう一度、西口のあの柱で待ち合わせよう。
君がいてくれて、本当に良かった