中道
明け方に目が覚めたら、親知らずの周囲の歯肉が大きく腫れ、脈打つように痛みが響いていた。
歯医者に行くために職場への出勤時間を遅くさせてもらおうと考えたけど、せっかく(?)なので、適当な理由をつけて丸一日仕事を休むことにした。半仮病というわけだ。
劇団の公演が控えていたのでまだ抜歯はせず、薬だけもらって、あとは家で本を読み少し昼寝した。
午後は池袋へ赴き、名画座で古い映画を二本観る。
特にプロを目指すわけでもない劇団活動を言い訳にしながらフラフラとアルバイト生活を続け、時には今日のように平気で仕事をサボるおれの態度は、ある種の人からすればひどくお気楽で怠惰なものなのだろう。
実際、おれはかつてその「ある種の人」からひどい侮蔑を向けられた経験がある。
おれはただ、自分が歩きやすい道を歩きたいだけなのに。