彼のシャツの胸ポケットからは、いつもハイライトが頭をのぞかせていた でも彼がハイライトを吸うのは、火をつける最初の一口だけ あとはずっと、指で挟んでいるか、灰皿のくぼみにそっと寝かせている ねえ、どうしていつも火をつけるだけで吸わないわけ? …
同じ工場で働く清掃のおばちゃんからアメ玉をもらった。辛さがほんのりと舌に刺さる、生姜風味ののど飴だった。 清掃のおばちゃんからアメ玉をもらうと、とても安心する。愛と違って、親切は確固としているから負けない。安心するということは、負けないもの…
渋谷は、23時。 道玄坂の猥雑なバーで腐りながらビールを胃に流し込んだその帰り道、駅前のTSUTAYAに寄ってぶらぶら歩いた。 おれは2階のCDフロアで、大滝詠一のコーナーを目指していた。特に意味はない。頭が雲っていたのだから。 回っても回っても、邦楽の…
行きどころのない話というのは、正直なところあまりウケない。特に異性には。 落としどころの見当もまったく付かぬままくどくどと内心を吐露し、話を何度もぐるぐるさせ、同情も共感も助言も叱咤も立ち入らせず最後には相手に「うーん、それって難しい問題だ…
明け方に目が覚めたら、親知らずの周囲の歯肉が大きく腫れ、脈打つように痛みが響いていた。 歯医者に行くために職場への出勤時間を遅くさせてもらおうと考えたけど、せっかく(?)なので、適当な理由をつけて丸一日仕事を休むことにした。半仮病というわけだ…
なんのこっちゃとお思いかもしれないが、実は、母音がかなり一致し、子音も一部重複した単語を短歌っぽいリズムで並べてみたのだ。 だからどうしたと言われてしまうと、それまでだが。
前職は、小さな編プロでライターまがいの仕事をしていた。おれとしてはおれなりの誠実さで執筆や雑用に取り組んでいたつもりだったが、結局十分な経験も得ぬまま、心身を損なった末、会社を去ってしまった。うまく言えないが、あの空間はおれにとっての「瘴…
いろんなひとに吹聴している話だから、この場でも臆面なく自慢しよう。 おれはかつて、ダイエットを成功させたことがある。約20kgの減量を成した。最も肥満体だった時期は18~20歳の頃で、身長183cmに対して、体重はちょうど90kg。そこから減量活動を敢行し現…
「もうそこそこ慣れているつもりだけど、やっぱりどこか至らない点というか、自分の欠点や不得意に気づけないところってあると思うんだよ。だからもしおれにダメな部分があったらさ、そこは遠慮なく言ってほしいんだよね」 そう言えるひとと、言えないひとが…
同じ劇団のメンバーのひとりが、稽古中の手持ちぶさたな時間に(だらしない劇団である)、なぜか手紙を書き始めた。中学(高校?)の演劇部で一緒だった友達に送るらしい。 便箋を取り出してペンを走らせた彼女は、当今においてあえて手書きのメッセージを綴るこ…
現在間借りしているアパートから少し浅草方面に歩くと、そこには隅田川が横たわっていて、嬉しい出来事があったときや、やりきれない思いに駆られてしまった日の夜には、川沿いの鉄柵に身体をあずけて水面を眺めたりする。子供の頃もよく川に足を運んで、当…
『ポリタス』に今回の参院選の政見放送の書き起こし記事がアップされていたので、とりあえず全政党分を読んでみた。 投票には今回も行く。そして月並みだけど、色々思った。ここに何か書いてみようかとブログを開いたものの、どの切り口から書こうとしても頭…
その日、井上ひさしと夕方の4時に食事の約束をしていた。待ち合わせ場所に向かうおれだったが、そこであることを思い出した。 そうだ、同じ時間に松田優作とも食事の約束をしていたのだった。 ダブルブッキングだ。 途方にくれたおれは、小学生の頃よく通っ…
またバイト先の工場の話をする。 おれとほぼ同年代の社員で、Oさんというひとがいる。 大学から新卒で入社し、現在工場に配属されている社員のなかではわりと新参のほうだ。 おれがこの工場で働き始めた頃にはまだOさんにも新人のオーラがびんびんと漂ってい…
去年の12月、天皇誕生日のことだった。その夜、おれは神保町のさくら通りでこんなひとたちとすれ違った。 そのひとたちは、男ふたり女ひとりの三人組で、ぱっと見、40代か50代くらいの年齢だった。 各々の手に握られていたのは、日の丸の国旗、メガホン、何…
おれの働く工場に、新入社員Nさんがやってきた。中途採用だ。 かなり細身の男で、歳はおれと同じくらい。言葉遣いは丁寧だけど、語気がやや角ばったしゃべり方をする。それに遊びのない黒縁メガネも相まって、堅物っぽい印象さえも受ける。でも、腰も低いし…
このブログのことをすっかり忘れていた。 嘘だ。忘れてなんかいない。 夢の中のおれはまだ高校生で、授業をさぼり、屋上で雲を眺めながら慣れないタバコをふかしていた。
GWといえば、旅行。旅行といえば、海外。平成最後の連休開始日、今日の成田空港は出国者で大混雑です。 まーーーーーーーーーおれにはカンケーないけどね!!! 収入の賃金依存度100%かつ時給労働者のおれには、勤め先の工場が全日非稼働なおかげで初夏にも…
文体。 作家の個性やクセをあらわす数多くの要素の中でも、この『文体』というやつは真っ先に目につく。そりゃ当たり前だろう。野球をほとんど知らないひとでもピッチャーの投球フォームの違いがわかるように、普段本をあまり読まないひとにも、ある作家とあ…
今日も、今日も疲れたね。 仕事前や仕事中はいつも言葉を散らかすのに、こうして帰りの地下鉄に揺られる頃には頭が空っぽになっている。 人間を取り戻す時間にこそ、もっともアクティブでいたいのに。 おれはいつ、顔を上げて地表を歩める? 明日は今日なの…
しばらく更新が途切れていたじゃないか。さては飽きたか。 そうだ、飽きた。 でも別に構わないだろう。ちょっと飽きが来たくらいで更新が止んだって。 どうせ誰も待ってないんだから。 おれが書くのを待ってるのは、いまのところおれひとりだけだ。 昨日、そ…
都内某所の、ある安ホテルに宿泊した。 一応都心に位置しているはずなんだけど、設備といい宿泊客といい、ここは東南アジアかと見紛うほどの「二線級ぽさ」で満ち溢れている。 隣室のいびきがクリアに伝わってくるベニヤ壁。何かの暗示にでもかけるつもりな…
このブログを立ち上げた当初から、そのうち『恋する惑星』について書きたいと思っていた。 おれの大好きな映画だ。 でも、大好きな映画であるはずなのに、いざ書こうとWordを立ち上げてみても、なかなか文章の道筋が見えてこない。『恋する惑星』という作品…
新宿。 ある知人と一緒にカラオケで一晩歌い明かす予定でいたのだが、もろもろの事情があり、キャンセルになってしまった。 夜の雑踏に取り残されたおれは、結局そのままひとりカラオケ店に入った。 でも、特段歌いたかったわけではない。きっと何かを埋め合…
自分のスマホには「青空文庫」のアプリがインストールしてある。 メインの読書媒体ではないものの、職場の休憩時間などでちょっとした作品を読むのに助かっている。 おれは「仕事の時間」から一歩でも外れた瞬間から嬉々として殻に閉じこもるタチの人間なの…
今でこそ定職に就かずフラフラとバイト生活を続けているが、これでも、新卒の時にはいちおう真面目に就職をした。 某テレビ局で、回線技術の仕事をしていた。業務内容を仔細に説明しようとするとあまりにも面倒なので書かないが、ごく簡単に言うと、電波を扱…
冷凍ピザの工場で働いている。 今日、その工場の洗い場で、鼻歌を歌いながら仕事をしていた。モップスの『たどりついたらいつも雨ふり』だ。鼻歌に意識をとらわれ過ぎて、うっかり容器に入った水を自分にぶっかけてしまったが、特に苛立ちもしなかったし、隣…
書きたいことが特にない。 でも、とりあえず白紙の前に立っていれば、何かが語られるような気がした。モノリスに触れるサル。午前三時。ラムとコカ・コーラ。求不得苦。 書くことが、好きで得意なときと、嫌いで苦手なときがある。今はどちらなのか分からな…
スポーツは好きだけど、体育会系は嫌い。 男気は好きだけど、男社会は嫌い。 勉強は好きだけど、授業は嫌い。 先生は好きだけど、教師は嫌い。 コミュニティは好きだけど、軍団は嫌い。 コミュニケーションは好きだけど、つるむのは嫌い。 ひとりでいるのは…
少し前に作成した記事『監視社会VSシーフードカレー』のタイトルが妙に気に入っている。ただ単に高橋源一郎の『ジョン・レノン対火星人』っぽいから好きなだけだろうが、一見相関の無さそうな名詞を対立させたらなんとなく示唆的になるのは面白い。 ためしに…